「ねぇ、涼兄…」

「ん?」

眠る前のおやすみのキスを終えた涼兄に抱きしめられながら、寝惚け眼でぽつりと尋ねる。

「昔…よく、キスしてくれてたよね」

「あぁ、お前がキスしてくれないと寝ないって駄々をこねたからね」

「うそ…」

「本当」

今度は額に、ちゅっと音を立てて口づけられる。

「でもね、クセになったら困るって父さんが言ってね。なんとかやめさせたんだよ」

「…そうだったんだ」

幼い頃、涼兄にねだった光景が脳裏にふっと浮かび、消える。
でも、その優しい温もりだけは、今もしっかり覚えているのが不思議だ。

「だから、涼兄とのキスは…気持ちいいのかな」

寝惚けた頭でポツリと呟けば、頭を撫でてくれていた涼兄の手がピタリと止まった。

「こーら、昔のキスと今のキスを一緒にするな」

「…?」

「兄妹のキスは、カウントに入らないよ」

「あ…」

そう言われて、閉じかけていた瞼がぱちりと開く。
すると、至近距離に大好きな涼兄の顔があった。

「恋人のキスを忘れたには、おしおきが必要かな?」

「え…!?」

移動する涼兄の体重を、ぎしっと音を立ててベッドが受け止めた。

「お前が昔と今は違うんだってわかるぐらい、沢山キスしてあげるよ」





さっきまでは、おやすみのキス
でもこれからは…恋人からの、熱い…愛のこもったキス





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涼兄の何気ない声は、やっぱ今も大好きだ。
「こーら…」とか…ちょっと咎めるというか、困ったやつだな的な声がツボ。
2010/06/14